○金沢市議会基本条例

平成25年3月26日

条例第22号

目次

前文

第1章 総則(第1条・第2条)

第2章 基本理念(第3条―第7条)

第3章 議会及び議員の役割(第8条―第12条)

第4章 議会と市民の関係(第13条)

第5章 議会と市長の関係(第14条―第20条)

第6章 会議等の運営(第21条―第25条)

第7章 政治倫理(第26条)

第8章 議員定数(第27条)

第9章 議会と議会事務局の体制強化(第28条―第34条)

第10章 議会及び議員の責務(第35条)

第11章 補則(第36条・第37条)

附則

我が国の憲法と地方自治法は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する機関として地方公共団体の設置を定めた。その運営については、住民の直接選挙により選ばれた議員により構成する議決機関としての議会と執行機関としての地方公共団体を代表する長との二元代表制を規定しているところである。

議会と市長は、それぞれ異なる権能を有しながら、相互に対等な立場で、常に緊張関係を保ちながら市政を運営していくことが期待されている。議会は、市の意思を決定し、行政を監視する。市長は、行政の執行権者として、市政の推進を図る。ここに、地方自治における議会制民主主義の根本原理が示されている。

近年、地方分権の進展に伴い地方公共団体の権限が拡大している中で、議会は、多様な意見を反映し、より存在感を持った議会として、更なる充実と強化が求められている。

金沢には、500有余年にわたり独自の自治の精神が受け継がれている。

本市議会は、市民の自治意識に応えるべく、議会の活性化と透明性の確保に不断の努力を積み重ねてきた。その成果は、議会の条例、規則等に具現化し、議会機能の強化を図ってきたところである。

今日、地方自治の確立が改めて求められている状況下において、更なる議会権能の強化を求める声の高まりを真摯に受け止め、本市議会は議会改革の一層の進展を目指すこととした。

ここに、市民の代表者たる議員により組織する議会の使命を深く自覚し、議会に係る基本的事項を定め、その責務を明らかにするとともに、将来にわたり市勢の発展と市民福祉の向上を図るため、全力を挙げて市民の負託に応えることを誓い、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、二元代表制の下、合議制の議事機関である議会及び議員の活動原則を定め、これらの役割及び行動指針を明らかにすることにより、地方自治の本旨に基づく市民の負託に応える議会を実現することを目的とする。

(用語の意義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 金沢市内に住所を有する個人及び法人をいう。

(2) 議会 金沢市議会をいう。

(3) 議員 金沢市議会議員をいう。

(4) 市長 金沢市長をいう。

第2章 基本理念

(議会の使命)

第3条 議会は、二元代表制の下、市民を代表する議決機関であることを常に自覚し、市政の公正性、透明性及び信頼性を確保するため、その自主性及び自立性を高め、機能を最大限発揮することにより、地方自治の確立に努めなければならない。

(議員の使命)

第4条 議員は、市民の代表者として、市政全般の課題及びこれに対する市民の意思を的確に把握し、市政に反映させるよう取り組まなければならない。

(議会の活動原則)

第5条 議会は、執行機関である市長との権能の違いを踏まえ、対等で緊張感のある関係を保ちながら、市長その他の執行機関(以下「市長等」という。)の市政運営の監視及び評価を行うものとする。

2 議会は、市民の多様な意見、要望等(以下「市民意見等」という。)を把握し、市政に反映させるため、議員相互の自由かつ達な討議及び市政等の調査研究を通じて必要な政策を立案し、市長等への提言又は国等への意思表示を行うなど市民とともにまちづくりの活動に取り組むものとする。

3 議会は、積極的に情報公開を進めるとともに、その意思決定の過程の透明性を高め、様々な機会を活用して市民への説明責任を果たすことにより、市民に開かれた議会運営に努めるものとする。

4 議会は、本来の機能である政策の決定を行うため、充実した審議及び政務活動に努めるものとする。

5 議会は、市民に分かりやすい議会運営を行うため、議会に関する条例、規則等について、絶えず見直しを行うものとする。

(議長の活動原則)

第6条 議長は、議会を代表し、議会の機能と権能の強化に向け、先導的な役割を果たすものとする。

2 議長は、議会の秩序の保持、議事の整理及び事務の統理並びに公平かつ公正な議会運営に努めるものとする。

3 議長は、議会全体の代表者として、中立性のある活動を行わなければならない。

(議員の活動原則)

第7条 議員は、市政の課題全般について市民意見等を的確に把握するとともに、自己の資質を高める不断の研さんによって、市民の代表者としてふさわしい活動を行うものとする。

2 議員は、議会の構成員として、一部の団体又は地域の代表にとどまることなく、市民全体の奉仕者として福祉の向上を目指して活動し、自らの議会活動について、市民に対する説明責任を果たすものとする。

第3章 議会及び議員の役割

(議会の役割)

第8条 議会は、次に掲げる役割を担うものとする。

(1) 議事機関として、議決により本市の意思決定を行うこと。

(2) 議員提案による条例の制定、議案の修正、決議等を通じて政策の立案及び提言を行うこと。

(3) 意見書等により関係機関に対し意見を表明すること。

(4) 市長等の行財政の運営状況を監視し、その結果を評価すること。

(5) 議会活動の透明性を確保するとともに、議会の会議、委員会その他議会の運営に関し協議又は調整を行うための場(以下「会議等」という。)の目的を達成するため、議員相互の討議を活発に行うこと。

(6) 議会活動で明らかとなった市政の課題及び審議、審査等の内容を市民に公表すること。

(議長の役割)

第9条 議長は、議会の会議に付議すべき案件が生じたと認めるときは、議会運営委員会の同意を得て、市長に対し臨時会の招集を請求することができる。

2 議長は、市政に関する重要な政策及び課題に対し、議会としての共通認識の醸成及び合意形成を図るため、全員協議会を開催することができる。

3 議長は、前項の全員協議会において取りまとめた意見等について、必要に応じて市長等に対し、要望又は提案を行うものとする。

(議員の役割)

第10条 議員は、次に掲げる役割を担うものとする。

(1) 会議等で審議、審査等を行い、必要に応じて、議案を提出すること。

(2) 会議等における審議、審査等不断の議会活動に資するため、市長等に資料の提出又は説明を求めるほか、必要な調査研究を行うこと。

(3) 市民の意思を市政に反映させるため、市政について、市民意見等を聴き、市長等及び市民に説明すること。

(会派の役割)

第11条 議員は、議会活動を行うため、会派を結成することができる。

2 会派は、議員の活動を支援するとともに、調査研究を行い、政策の立案及び提言、予算要望並びに広報活動の主体となることができる。

3 会派は、政策の立案、決定、提言等に際して、相互に調整を行い、合意形成に努めるものとする。

(危機管理)

第12条 議会は、災害等の不測の事態から市民の生命、身体及び財産並びに生活の平穏を守るため、市長等と協力し、災害等の発生時に総合的かつ機能的な活動が図られるよう危機管理体制の整備に努めるものとする。

2 議長は、災害等の不測の事態が発生し、又はそのおそれがあるときは、必要に応じ、議員による協議又は調整を行うための会議を開催する。

3 議会は、災害等の不測の事態が発生したときは、市長等と連携し、その状況を調査して市民意見等を的確に把握するとともに、必要に応じ、市長等に対し提言又は提案を行う。

第4章 議会と市民の関係

第13条 議会は、市民意見等を把握し、議会活動に反映させるとともに、市民が議会に意見等を反映させる機会を確保するよう努めるものとする。

2 議会は、その透明性を高めるため、会議等を原則として公開するとともに、議会活動に関する情報を市民に公開し、市民に対する説明責任を果たすものとする。

第5章 議会と市長の関係

(議会と市長等の関係の基本原則)

第14条 議会は、二元代表制の下、市民により選挙された議員による議決機関として、市長とは対等の立場で審議し、本市の意思決定を行うとともに、市長等の事務の執行について、監視及び評価を行うものとする。

(議会への説明)

第15条 市長等は、予算編成の基本方針を定め、若しくは予算を作成し、又は市政に係る基本計画等の重要な政策若しくは施策に関する基本方針、素案その他これらに類するものを作成し、若しくは変更したときは、議会にその内容を次の事項に則して説明するよう努めるものとする。

(1) 重要な政策等を必要とする背景

(2) 検討した他の政策案等との比較検討

(3) 総合計画における根拠又は位置付け

(4) 関係法令及び条例等

(5) 財源措置

(6) 将来にわたる効果及び費用

(議決事件)

第16条 議会は、その意思決定及び監視の機能の向上を図るとともに、市長等が提案する重要な政策について市民に開かれた議論を行うため、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第96条第2項の規定による議会の議決すべき事件を積極的に拡大するよう努めるものとする。

2 前項の議会の議決すべき事件に関し必要な事項は、別に条例で定める。

(議会活動の尊重)

第17条 市長等は、予算の作成又は市政に係る基本計画等の重要な政策の作成若しくは変更に当たっては、議会からの政策提言等の趣旨を尊重するものとする。

(市長等の質問)

第18条 市長等は、議会の会議又は委員会において、議長又は委員長の許可を得て、質疑又は質問の趣旨を確認するための質問をすることができる。

(議員の文書質問)

第19条 議員は、議長に申し出て、市長等に文書により質問することができる。この場合において、市長等は、議長を通じて文書により回答するものとする。

(政策等の監視及び評価)

第20条 議会は、市長等が提案する重要な政策について、その水準の向上に資するため、市長等に対し、その趣旨及び内容について十分に説明を求めるとともに、予算及び決算の審議に当たっては、委員会を通じ、施策別又は事業別の説明を市長等に求めるものとする。

2 議会は、予算編成の方針及び内容等について市長等から説明を受けるため、必要に応じて予算説明会を開催するものとする。

3 議会は、重要な政策等の提案を受けたときは、執行後における政策等の評価に資する審議に努めるものとする。

第6章 会議等の運営

(会議の運営原則)

第21条 議長及び委員長は、議会の運営に当たっては、議会活動の公正性及び透明性を確保し、議員が活発な討議を行えるよう努めるとともに、民主的で円滑な運営を推進するものとする。

2 議会は、議長の選出に当たっては、その職に就くことを希望する者に対し、その所信を表明する場を設けることができる。

3 議会は、議会運営上の課題については、議会運営委員会で協議し、調整するものとする。

(通年議会)

第22条 議会は、別に条例で定めるところにより、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる。

(代表質問)

第23条 議会の会議における質疑又は一般質問は、会派を代表して行うことができる。

(一問一答方式)

第24条 議会の会議における質疑又は一般質問は、その論点及び争点を明確にするため、議会運営委員会の確認を経て、一問一答方式で行うことができる。

(委員会)

第25条 委員会は、公開を原則とし、議案等の審査及びその所管に属する事務の調査(以下「議案審査等」という。)の充実を図るとともに、委員による活発な討議を行い、その機能を十分に発揮するものとする。

2 委員会は、議案審査等に当たっては、市長等に資料の提出を求めるものとする。この場合において、市長等は、誠実に対応しなければならない。

3 委員会は、議案審査等に当たっては、原則として、傍聴者に審査資料を貸与するものとする。

4 議会は、その調査及び政策の立案に関する機能を高めるため、法第109条第1項の規定により特別委員会を設置する。

第7章 政治倫理

第26条 議員は、主権者たる市民の厳粛な負託に応えるため、市民の代表として市政に携わる権能と責務を有することを深く認識するとともに、高い倫理観と品位を保持し、議員として誠実かつ公正に職務を遂行するものとする。

第8章 議員定数

第27条 議会は、議員の定数の変更に当たっては、市政の現状と課題及び将来の予測と展望等を十分に勘案するとともに、市民意見等を聴取するものとする。

2 議員の定数は、人口、面積、財政力及び市の事業課題等を参考にして検討されなければならない。

3 議員の定数を変更する条例の議案は、市民の直接請求による場合及び市長が提出する場合を除き、検討の経過等を明らかにして、委員会又は議員から提出するものとする。

第9章 議会と議会事務局の体制強化

(議会改革の推進と議会の機能強化)

第28条 議会は、その信頼性を高めるとともに、不断に議会改革の推進に努め、あるべき議会を創造するため、別に定めるところにより、議会活性化推進会議を置くものとする。

2 議会は、市政運営の監視及び評価並びに政策の立案及び提言に関する機能の強化を図るとともに、市政の課題に関する調査のため必要があると認めるときは、有識者等で構成する調査機関を設置するものとする。

3 議会は、市民参加の機会の充実を図るため、公聴会及び参考人の制度を活用し、議会の審議に反映するよう努めるものとする。

(広報広聴の充実)

第29条 議会は、多様な広報手段を活用し、議会活動に関する情報を積極的に公開し、及び発信するものとする。

2 議会は、議会活動の内容を市民に報告し、広く市民意見等を聴取するとともに、それらを市政に反映するため、必要に応じて意見交換会を開催するものとする。

3 議会は、その広報及び広聴の内容及び在り方について、常に検証し、充実に努めるものとする。

(政務活動費)

第30条 金沢市議会政務活動費の交付に関する条例(平成13年条例第2号)の規定により政務活動費の交付を受けた議員は、政務活動費を有効に活用して、積極的に市政に関する調査研究その他の活動を行わなければならない。

2 議員は、政務活動費の使途について、別に定める基準を厳格に遵守しなければならない。

(議会事務局の体制強化)

第31条 議長は、議会の政策の立案に関する機能を向上させ、議会活動を円滑かつ効率的に行うため、議会事務局の機能の強化及び組織体制の整備に努めるものとする。

2 議長は、議会事務局の職員(以下「職員」という。)の任免を行うとともに、専門的な知識経験を有する職員の任用及び専門的な能力を有する職員の養成に努めるものとする。

(図書室の充実)

第32条 議会は、議員の調査研究に資するために設置する市議会図書室を適正に管理し、その機能を強化するものとする。

2 議会は、市議会図書室において、議会に関する情報を整理し、市民が利用しやすい運営を行うとともに、市民に対し情報を発信するものとする。

(予算の確保)

第33条 議会は、二元代表制の趣旨を踏まえ、議決機関としての機能を確保するとともに、より円滑な議会運営を実現するため、必要な予算の確保に努めるものとする。

(他の地方公共団体等との交流及び連携の推進)

第34条 議会は、広域的な行政課題に的確に対応するとともに、分権時代にふさわしい議会の在り方についての調査研究を行うため、他の地方公共団体との交流及び連携を推進するものとする。

2 議会は、市民相互の理解を深め、国際親善に資するため、姉妹都市等との交流を推進するものとする。

第10章 議会及び議員の責務

第35条 議会及び議員は、この条例及び議会に関する他の条例、規則等を遵守して議会を運営し、市民の負託に応えなければならない。

2 議会は、この条例の理念を議員に浸透させるため、一般選挙を経た任期開始後速やかに研修を行わなければならない。

第11章 補則

(継続的な検討)

第36条 この条例の施行後、議会は、常に市民の意見、社会情勢の変化等を勘案して、議会運営に係る不断の評価と改善を行い、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

(他の条例等との関係)

第37条 この条例は、議会に関する基本的事項を定める条例であり、議会に関する他の条例、規則等を解釈し、又は制定し、若しくは改廃するときは、この条例の趣旨を尊重し、この条例に定める事項との整合を図るものとする。

この条例は、平成25年4月1日から施行する。

金沢市議会基本条例

平成25年3月26日 条例第22号

(平成25年4月1日施行)

体系情報
第2類
沿革情報
平成25年3月26日 条例第22号