○金沢市歴史的建築物の現状変更の規制及び保存のための措置に関する条例
平成31年3月25日
条例第1号
目次
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 保存建築物の登録等(第3条―第6条)
第3章 保存建築物等に関する制限
第1節 現状変更の規制(第7条・第8条)
第2節 保存のための措置(第9条―第14条)
第4章 雑則(第15条―第18条)
第5章 罰則(第19条―第22条)
附則
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この条例は、歴史的な価値を有する建築物について、建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「法」という。)第3条第1項第3号の規定に基づく保存建築物として保存及び活用を図るため、当該建築物に対する現状変更の規制及び保存のための措置について必要な事項を定めるものとする。
(用語の意義)
第2条 この条例で使用する用語の意義は、法及び建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)で使用する用語の意義の例によるほか、次に定めるところによる。
(1) 対象建築物 次のいずれかに該当する建築物をいう。
ア 文化財保護法(昭和25年法律第214号)第57条第1項の規定により有形文化財として登録された建築物
イ 景観法(平成16年法律第110号)第19条第1項の規定により景観重要建造物として指定された建築物
ウ 地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(平成20年法律第40号)第12条第1項の規定により歴史的風致形成建造物として指定された建築物
エ 石川県文化財保護条例(昭和32年石川県条例第41号)第4条第1項の規定により石川県指定有形文化財として指定された建築物
オ 金沢市文化財保護条例(昭和48年条例第8号)第5条第1項の規定により金沢市指定文化財として指定された建築物
カ 金沢市伝統的建造物群保存地区保存条例(昭和52年条例第2号)第3条第2項第2号の規定により伝統的建造物として決定された建築物
キ 金沢市こまちなみ保存条例(平成6年条例第1号)第12条第1項の規定によりこまちなみ保存建造物として登録された建築物
ク 金沢市における美しい景観のまちづくりに関する条例(平成21年条例第4号)第35条第1項の規定により保存対象物等として指定された建築物
(2) 移築 建築物を他の敷地に移して新築することをいう。
(3) 増築等 建築物の増築、改築、移転、移築若しくは用途の変更又は修繕若しくは模様替をいう。
(4) 保存建築物 対象建築物のうち、第4条第1項の規定による登録を受けたものをいう。
(5) 保存対象敷地 保存建築物が存する敷地(当該保存建築物の移築をする場合にあっては、移築後の敷地)をいう。
第2章 保存建築物の登録等
(所有者による登録の申請)
第3条 対象建築物の所有者は、当該対象建築物の保存及び活用を図るため、法第3条第1項第3号の規定による指定を必要とするときは、市長に対し、当該対象建築物を保存建築物として登録することを申請することができる。
2 前項の規定による申請をしようとする者は、次に掲げる事項を定めた当該対象建築物の保存及び活用に係る計画(以下「保存活用計画」という。)を策定し、市長に提出しなければならない。
(1) 当該対象建築物の名称及び概要
(4) 当該対象建築物の保存を図りながら、これを活用するために必要な増築等に係る工事の内容
(5) 当該対象建築物の安全性に関する事項
(6) 当該対象建築物の維持管理に関する事項
(7) 前各号に掲げるもののほか、市長が当該対象建築物の良好な保存及び活用並びに当該対象建築物が存する敷地の周辺の環境の保全を図るために必要があると認める事項
3 第1項の規定による申請をしようとする者は、その者以外に当該対象建築物が存する敷地について所有権又は借地権を有する者があるときは、あらかじめ、当該申請の内容について、これらの者の同意を得なければならない。
(保存建築物の登録等)
第4条 市長は、前条第1項の規定による申請があった場合において、当該対象建築物の保存及び活用を図るために法第3条第1項第3号の規定による指定を受ける必要があり、かつ、当該対象建築物に係る保存活用計画について交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、当該対象建築物を保存建築物登録簿に登録するものとする。
2 市長は、前項の規定による登録をしようとするときは、あらかじめ、金沢市建築審査会の意見を聴くことができる。
3 市長は、第1項の規定による登録をしたときは、その旨を保存建築物の所有者に通知するものとする。
4 市長は、第1項の規定による登録をしたときは、その旨を公告するとともに、保存対象敷地及び当該保存対象敷地内に存する建築物の位置その他規則で定める事項を表示した図書をその事務所に備えて、一般の縦覧に供さなければならない。
6 保存建築物の所有者は、第4項の規定による公告があったときは、当該保存建築物について、法第3条第1項第3号の規定による指定を受けるための必要な手続をとるものとする。
(登録事項の変更)
第5条 保存建築物の所有者は、保存活用計画の変更(規則で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、市長に対し、前条第1項の保存建築物登録簿に登録された事項の変更(以下「変更登録」という。)を申請しなければならない。
3 市長は、第1項の規定による申請があったときは、当該申請の内容が当該保存建築物の保存及び活用を図るために必要であり、かつ、変更後の保存活用計画について交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、変更登録をすることができる。
(登録の抹消)
第6条 市長は、保存建築物について、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該保存建築物の登録を抹消しなければならない。
(1) 法第3条第1項第1号又は第2号に規定する建築物に該当するに至ったとき。
(2) 滅失、毀損その他の事由によりその登録の理由が消滅したとき。
2 市長は、保存建築物について、公益上の理由その他の特別な理由があると認めるときは、その登録を抹消することができる。
3 市長は、前2項の規定により保存建築物の登録を抹消したときは、その旨及びその理由を公告するとともに、当該抹消された保存建築物の所有者に通知するものとする。
4 市長は、前項の規定による公告をしたときは、当該保存建築物について、法第3条第1項第3号の規定による指定の解除に関し、必要な措置を講じなければならない。
第3章 保存建築物等に関する制限
第1節 現状変更の規制
(増築等の許可等)
第7条 保存対象敷地内において増築等をしようとする者又は保存建築物に関しその形状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、あらかじめ、市長の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で市長が定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
3 市長は、第1項の許可の申請があった場合において、当該保存建築物の保存のために必要があると認めるときは、許可に必要な条件を付することができる。
4 第1項の許可の申請に係る行為が、法第6条第1項若しくは第6条の2第1項(これらの規定を法第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による確認の申請又は法第18条第2項(法第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による通知を要するものであるときは、当該申請又は通知をしようとする日までに当該許可を受けなければならない。
5 第1項の許可に係る工事は、当該許可を受けた後でなければ、これを施工してはならない。
(完了検査)
第8条 前条第1項の許可を受けた者は、当該許可に係る工事を完了したときは、規則で定めるところにより、市長の検査を申請しなければならない。
3 前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から4日以内に市長に到達するようにしなければならない。
4 市長は、第1項の規定による申請があったときは、当該申請を受け付けた日から7日以内に、当該申請に係る保存建築物が当該許可の内容に適合しているかどうかを検査しなければならない。
第2節 保存のための措置
(所有者の管理義務等)
第9条 保存建築物の所有者は、保存活用計画に従って、当該保存建築物の保存及び活用を図らなければならない。
2 保存建築物の所有者は、当該保存建築物の管理に関する責任者(以下「保存管理責任者」という。)を選任することができる。
3 前項の規定により保存管理責任者を選任したときは、保存建築物の所有者は、速やかに、規則で定めるところにより、市長に届け出なければならない。保存管理責任者を解任したときも、同様とする。
4 第1項の規定は、保存管理責任者について準用する。
5 保存建築物の所有者に変更があったときは、新たに所有者となった者は、速やかに、規則で定めるところにより、市長に届け出なければならない。
6 保存建築物の所有者又は保存管理責任者は、その氏名若しくは名称又は住所その他規則で定める事項を変更したときは、速やかに、規則で定めるところにより、市長に届け出なければならない。
(記録の作成及び保存)
第10条 保存建築物の所有者又は保存管理責任者は、定期的に当該保存建築物の維持管理の状況に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
(報告等の聴取)
第11条 市長は、必要があると認めるときは、保存建築物の所有者、管理者、占有者若しくは保存管理責任者又は建築主、設計者、工事監理者若しくは工事施工者に対し、当該保存建築物の現状若しくは管理又は第7条第1項の許可に係る工事の計画若しくは施工の状況に関して、報告又は資料の提出を求めることができる。
(管理に関する助言、勧告及び命令)
第12条 市長は、保存建築物の所有者又は保存管理責任者に対し、当該保存建築物を管理するために必要な助言を行うことができる。
2 市長は、保存建築物の構造若しくは建築設備又は保存対象敷地の管理が適当でないため当該保存建築物の損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば保安上著しく危険な状態となり、又は衛生上著しく有害となるおそれがあると認める場合においては、当該保存建築物若しくは当該保存対象敷地の所有者又は保存管理責任者に対し、相当の猶予期限を付けて、管理の方法の改善その他管理に関し必要な措置を講ずることを勧告することができる。
3 市長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に係る措置を講じなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、当該勧告に係る措置を講ずることを命ずることができる。
2 市長は、この条例の規定又は第7条第3項の条件に違反することが明らかな増築等の工事中の保存建築物等については、緊急の必要があって金沢市行政手続条例(平成8年条例第41号)第13条第1項に規定する意見陳述のための手続をとることができない場合に限り、当該手続によらないで、当該保存建築物等の建築主又は当該工事の請負人若しくは現場管理者に対して、当該工事の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。
(権利義務の承継)
第14条 所有者の変更により新たに保存建築物の所有者となった者は、当該保存建築物に関しこの条例の規定により市長が行った助言、勧告又は命令その他の処分による当該所有者でなくなった者の権利及び義務を承継する。
第4章 雑則
2 第7条第1項の許可を受けた保存建築物の工事のうち、建築士法第2条第7項に規定する構造設計図書による同法第20条の2第1項の建築物の工事は、構造設計1級建築士(同法第10条の2の2第4項に規定する構造設計1級建築士をいう。以下この項において同じ。)の構造設計(同法第2条第7項に規定する構造設計をいう。以下この項において同じ。)又は当該保存建築物が構造関係規定(同法第20条の2第2項に規定する構造関係規定をいう。)に適合することを構造設計1級建築士が確認した構造設計によらなければ、することができない。
(調査、検査等)
第17条 市長は、この条例の施行に必要な限度において、市長が指定する職員に、保存対象敷地若しくは保存建築物等に立ち入り、その状況を調査させ、必要な検査をさせ、又は関係者に質問させることができる。ただし、住居に立ち入るときは、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。
2 前項の規定により調査、検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による調査、検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(委任)
第18条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
第5章 罰則
第20条 次の各号のいずれかに該当する者は、200,000円以下の罰金に処する。
(2) 第7条第3項の規定により許可に付された条件に違反した者
(4) 第11条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
第21条 第17条第1項の規定による調査若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者は、100,000円以下の罰金に処する。
第22条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前3条に規定する違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附則
1 この条例は、平成31年10月1日から施行する。
2 この条例の施行の際現に解体され、その建築材料の全部又は一部が保管されている建築物で、当該建築材料の全部又は一部を用いてその原形を再現しようとするものについては、解体されていないものとみなして、この条例の規定を適用する。