○金沢市ものづくり基本条例
平成21年3月24日
条例第2号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 ものづくりに関する基本的な施策(第9条―第13条)
第3章 ものづくりの推進に対する支援等(第14条―第16条)
第4章 雑則(第17条)
附則
私たちのまち金沢は、固有の自然、歴史、文化等に育まれたものづくりの技と心が人々の暮らしの中に溶け込んでおり、この技へのこだわりと革新的な意識が、伝統工芸、繊維、機械、農業などの分野における個性豊かで品質の高い製品や農林産物を生み出し、多彩な産業を創出してきた。
さらに、これらの産業が文化を支え、文化が産業に刺激を与え、産業と文化が市民生活の向上に積極的な役割を果たすなど、生活、文化及び産業が相互に連環しつつ、ものづくりのまちとしての金沢の個性をつくり、それがまちの魅力となって、まちの発展を支えてきた。
もとより、ものづくりは、働く意欲や誇りを培い、協働意識を高めるなど、人づくり、まちづくりにもつながるものであり、こうした観点からも、ものづくりは大きな役割を果たしている。
このような背景のもと、これからも、ものづくりを大切にするとともに、ものづくりを独創性と多様性に富んだ産業として振興し、新たな価値の創造に挑戦していくことは、豊かで活力ある地域社会を実現するうえで重要である。
ここに、私たちは、ものづくりのまちとしての伝統と誇りを継承発展させることにより、本市の健全かつ持続的な発展に寄与するため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市におけるものづくりについて、基本理念を定め、並びに事業者、産業関係団体、高等教育機関、市民及び市の役割を明らかにするとともに、ものづくりに関する施策の基本となる事項等を定めることにより、ものづくりを総合的かつ計画的に推進し、もって本市の健全かつ持続的な発展に寄与することを目的とする。
(1) ものづくり 人の知識、経験、知恵、発想等をもとに、目的に応じて多様な技術又は技能により価値の創造につながる有形無形のものを作り出すことをいう。
(2) ものづくり産業 生活に係る伝統工芸に関する業種、石工、大工、左官その他の職人に係る技芸に関する業種、機械、機械用部品等の製造に関する業種、農業及び林業の業種並びに情報通信、映像、デザインその他のものづくりに係る事業活動を行う業種をいう。
(3) 事業者 ものづくり産業に属する事業を行う者をいう。
(4) 産業関係団体 商工会議所、事業協同組合その他の事業者の事業活動の支援に関する事業を行う団体をいう。
(5) 高等教育機関 大学、高等専門学校その他の高等教育を行う機関をいう。
(6) 地域資源 本市固有の自然、歴史、文化等の土壌、ものづくりに係る知識、高度な技術又は技能等、ものづくり産業及び高等教育機関の集積その他本市におけるものづくりのために有用であると認められるものをいう。
(基本理念)
第3条 ものづくりは、市民生活及び文化の向上を支え、金沢のまちの発展に重要な役割を果たしていることにかんがみ、ものづくりの大切さを認識し、及び尊重する社会的気運を醸成しながら、積極的に進められなければならない。
2 ものづくりは、人づくりにつながり、かつ、知識、技術又は技能等の継承及び向上発展が人により支えられていることにかんがみ、ものづくりの分野における担い手の確保及び人材の育成を図ることを基本として進められなければならない。
3 ものづくりは、これを産業として振興していくとともに、ものづくり産業の振興に当たっては、事業者の自主的な努力が最も重要であることにかんがみ、これを促進することを基本として行われなければならない。
4 ものづくり産業の振興は、地域資源を活用するとともに、環境との調和が図られることにより行われなければならない。
5 ものづくり産業の振興は、世界的規模に展開することを目標に、海外の地域における事業者等との交流、連携等が図られることにより行われなければならない。
(事業者の役割)
第4条 事業者は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、当該事業活動に係る伝統的又は専門的な知識、技術又は技能等の継承及び向上発展に努めながら、絶えず経営の革新を図るとともに、経済的社会的環境の変化に即応して、自主的に経営の向上及び改善に努めなければならない。
2 事業者は、基本理念にのっとり、ものづくり産業の担い手である技術、技能及びこれらに関する知識について習熟した者(以下「技術者等」という。)の確保及び育成を図るとともに、本市が実施するものづくりに関する施策に協力しなければならない。
3 事業者は、基本理念にのっとり、地域社会における自らの社会的責任を認識し、当該事業活動を行うに当たっては、その地域の良好な環境が確保されるよう適切な措置を講ずるとともに、それぞれの実情に応じて地域貢献のための取組を行うよう努めなければならない。
(産業関係団体の役割)
第5条 産業関係団体は、基本理念にのっとり、その関係するものづくり産業の振興のために自らが目指すべき目標及び方向性を示しながら、当該ものづくり産業の振興に係る課題の把握及び解決に持続的に取り組まなければならない。
2 産業関係団体は、基本理念にのっとり、事業者の経営の向上及び改善を積極的に支援するとともに、本市が実施するものづくりに関する施策に協力しなければならない。
3 産業関係団体は、基本理念にのっとり、事業者、他の産業関係団体、高等教育機関及び市と相互に連携し、地域の特性を生かしたものづくり産業の集積及び特色ある産地の育成に努めなければならない。
(高等教育機関の役割)
第6条 高等教育機関は、基本理念にのっとり、事業者、産業関係団体等と連携し、ものづくり産業を担う人材の育成に努めるとともに、研究開発の成果等を積極的に活用してものづくり産業の振興に資するよう努めなければならない。
(市民の役割)
第7条 市民は、基本理念にのっとり、ものづくりの大切さについて理解と関心を深めるとともに、本市が実施するものづくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。
(市の役割)
第8条 市は、基本理念にのっとり、ものづくりに関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施しなければならない。
2 市は、基本理念にのっとり、前項の規定により策定する施策に事業者、産業関係団体、高等教育機関及び市民の意見を十分に反映させるよう努めるとともに、その施策の実施に当たっては、これらの者の理解と協力を得るよう努めなければならない。
3 市は、基本理念にのっとり、第1項の施策を策定するに当たっては、国、県その他公共団体と密接な連携を図るよう努めなければならない。
4 市は、基本理念にのっとり、事業者、産業関係団体、高等教育機関、市民等の相互の連携が図られるよう総合的な調整に努めなければならない。
第2章 ものづくりに関する基本的な施策
(人づくりの推進)
第9条 市は、次代の社会を担う子どもたちが、ものづくりの大切さについての理解と関心を深めることができるよう、ものづくりに関する教育を推進するものとする。
2 市は、職人大学校をはじめ、工芸、製造、農業、林業等の分野における事業を通じて、ものづくりに係る人材の確保又は育成に努めるほか、事業者、産業関係団体、高等教育機関等と連携し、ものづくり産業において新たに創業を行う者、技術者等及びその後継者その他の人材の確保又は育成の推進に関する施策を実施するものとする。
(事業環境の整備等)
第10条 市は、ものづくり産業の基盤整備に努めるとともに、事業者の経営基盤の強化、新たな事業の創出及び多様なものづくり産業の集積の支援その他の事業環境を整備するために必要な施策を実施するものとする。
(付加価値を高めるものづくりの促進)
第11条 市は、地域資源の活用並びに産学連携(事業者又は産業関係団体と高等教育機関との相互の連携をいう。)による新商品及び新技術の開発の支援その他の付加価値を高めるものづくりを促進するために必要な施策を実施するものとする。
(戦略的な販路開拓の促進)
第12条 市は、事業者及び産業関係団体が行う商品等のブランド力の向上(独自性、地域性等を有する製品、農林産物、産地等について、固有の特別な価値を有する銘柄としての社会的地位を確立することにより、市場における当該銘柄の競争力を高めることをいう。)及び商品等の消費の拡大の支援その他のものづくり産業に係る販路の開拓を促進するために必要な施策を実施するとともに、本市におけるものづくりを国内外に発信するものとする。
(普及啓発等)
第13条 市は、ものづくりの大切さについての市民の理解と関心を深めるため、その普及啓発に努めるとともに、市民がものづくりにふれあう機会の確保その他必要な施策を実施するものとする。
第3章 ものづくりの推進に対する支援等
(援助)
第14条 市長は、ものづくりを推進するため必要があると認めるときは、技術的な援助をし、又は予算の範囲内において、財政的な援助をすることができる。
(表彰)
第15条 市長は、ものづくりの推進に著しく貢献した者を表彰することができる。
(ネットワークの構築)
第16条 市は、ものづくりを推進するため、事業者、産業関係団体、高等教育機関、市民等との有機的な連携体制の構築を促進するために必要な措置を講ずるものとする。
第4章 雑則
(委任)
第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、平成21年4月1日から施行する。