「由縁(ゆかり)の女」

泉 鏡花

【泉鏡花】

泉鏡花(本名・泉鏡太郎)は、1873年(明治6)11月4日、このバス停がある大通りの裏の金沢市下新町(現在の泉鏡花記念館の場所)で生まれました。尾崎紅葉に師事して文壇に登場した明治時代半ばから、亡くなる1939年(昭和14)までに小説、戯曲を300編あまりも世におくり出しました。その幻想と浪漫に彩られた作風は、芥川龍之介、里見弴、三島由紀夫、澁澤龍彦など多くの文学者を魅了しました。

【物語】

1919年(大正8)1月から1921年(大正10)2月まで雑誌『婦人画報』に連載されました。鏡花の作品の中で二番目に長い小説です。主人公は、金沢出身で今は東京で所帯を持っている詩人の麻川礼吉、彼が卯辰山に葬られた両親の骨を東京に持ち帰るために帰省することから物語は始まります。金沢にやってきた礼吉に3人の女性――又従妹でお侠(きゃん)なお光、叔母の家にいた可憐で薄幸な露野、永遠の憧れである気高いお楊――が絡むことで、現在と過去とが交錯する浪漫的な世界に引き込まれていきます。

【舞台】

主人公の名が麻川であることからもうかがえるように、この作品は、浅野川を軸にして展開します。浅野川の上流・中流・下流でそれぞれの女性に関係した物語が展開しますが、それらは一筋の浅野川が結ぶ機縁によってひとつに織りなされていきます。そして浅野川の奥の奥には、主人公が今は亡き母といっしょに訪れた、白菊谷という究極の場所が設定されています。

【引用部分】

小橋の袂(たもと)で、露野がお光に声をかける場面です。金沢に帰省した麻川は、針屋を営む又従妹のお光の家に滞在しています。露野は、麻川の叔母が営んでいた温泉宿に勤めていたことがあり、彼が宿に忘れたキセルを懸命に走って追いかけて届けてくれたことがあったのです。この露野は、旧藩士の威光を笠に着て非道を働く大郷子に囲われており、露野と麻川は大郷子の一味から追われることとなります。

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