○金沢市中小企業・小規模企業振興基本条例
令和7年9月22日
条例第39号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第11条)
第2章 中小企業及び小規模企業の振興に関する基本的な施策等(第12条―第22条)
第3章 雑則(第23条)
附則
金沢の経済の礎は、藩政期に培われた工芸・文化やその職人気質を源流とした繊維工業と機械工業を軸とする独自の産業革命が、私たちのまちの中小企業及び小規模企業の手によって成し遂げられたことにある。これら先達の成功は、文化と経済の連環を生むとともに、伝統と革新の精神を多様な中小企業及び小規模企業に根付かせた。今日の金沢を世界で独特の輝きを放つ個性ある都市へと高めてきた原動力は、この地で中小企業及び小規模企業が活躍してきたことにある。
また、中小企業及び小規模企業が、それぞれの地域や分野で進んで組織を形成し、これらが有機的に結び付くことで、相乗効果を生み出し、金沢の魅力を培ってきた。とりわけ商店街は、共存しながら互いに刺激し合い、それぞれがコミュニティを形成する核となっており、地域住民に質の高い豊かな暮らしを提供するとともに、交流によるにぎわいを創出している。
さらに、中小企業及び小規模企業は、就業の機会を創出することで人々の働く意欲を満たすだけでなく、住民とともにまちづくりにも参画することで地域社会の活性化に貢献するなど重要な役割を果たしている。
このように地域の生活基盤の形成に加え、伝統に絶えず革新の息吹を吹き込むことにより、新しい価値を創造しながら文化をも磨き高めてきた中小企業及び小規模企業は、金沢に欠かすことのできない貴重な財産である。
ここに、私たちは、中小企業及び小規模企業の振興に関する施策を積極的に推進することにより、金沢が更なる飛躍を遂げ、将来にわたり希望と活力に満ちた魅力あふれるまちとするため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市における中小企業及び小規模企業の振興について、基本理念を定め、並びに中小企業者及び小規模企業者、中小企業団体等、企業支援団体、大企業者、金融機関、高等教育機関並びに市民の役割並びに市の責務を明らかにするとともに、施策の基本となる事項等を定めることにより、中小企業及び小規模企業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって本市経済の健全な発展及び市民生活の向上を図ることを目的とする。
(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する中小企業者をいう。
(2) 小規模企業者 法第2条第5項に規定する小規模企業者をいう。
(3) 中小企業団体等 次に掲げる団体をいう。
ア 中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号)第3条第1項に規定する中小企業団体その他これに類する団体で市長が認めるもの
イ 商店街振興組合、商店街振興組合連合会その他これらに類する団体で市長が認めるもの
(4) 企業支援団体 商工会議所、商工会及び商工会連合会をいう。
(5) 大企業者 中小企業者及び小規模企業者以外の事業者をいう。
(6) 金融機関 銀行、信用金庫その他の金融に関する業務を行う機関をいう。
(7) 高等教育機関 大学、高等専門学校その他の高等教育を行う機関をいう。
(基本理念)
第3条 中小企業及び小規模企業の振興は、中小企業者及び小規模企業者が創意工夫を発揮して、又は地域の特色を生かして事業活動を行うことを通じ、地域における経済の活性化のみならず、まちの個性の継承に重要な役割を果たしているとの認識の下に、中小企業者及び小規模企業者の自主的な努力が助長されることを基本として行われなければならない。
2 中小企業及び小規模企業の振興は、人材が中小企業及び小規模企業の根幹を支えるものであるとの認識の下に、多様な分野において事業活動を行う中小企業者及び小規模企業者が必要とする人材の育成及び確保が図られるように行われなければならない。
3 中小企業及び小規模企業の振興は、本市固有の自然、歴史、文化等の土壌、ものづくり(金沢市ものづくり基本条例(平成21年条例第2号)第2条第1号に規定するものづくりをいう。)に係る知識、高度な技術又は技能等、ものづくり産業(同条第2号に規定するものづくり産業をいう。)及び高等教育機関の集積その他の本市の特色ある地域資源(以下単に「地域資源」という。)の活用が重要であるとの認識の下に行われなければならない。
4 中小企業及び小規模企業の振興は、中小企業者及び小規模企業者、中小企業団体等、企業支援団体、大企業者、金融機関、高等教育機関並びに市民の役割並びに市の責務をそれぞれが担うとともに、相互の理解と連携の下に、協働して行われなければならない。
5 小規模企業の振興は、小規模企業者が地域に根ざした事業活動を行うことを通じて、それぞれの地域における経済の活性化並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に寄与し、ひいては将来における本市の経済及び社会の発展に寄与するという重要な意義を有するものであることに鑑み、小規模企業者の活力が最大限に発揮されるように行われなければならない。
(中小企業者及び小規模企業者の役割)
第4条 中小企業者及び小規模企業者は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、絶えず経営の革新(法第2条第2項に規定する経営の革新をいう。以下同じ。)に努めるとともに、経済的社会的環境の変化に即応して、経営の向上及び改善に努めなければならない。
2 中小企業者及び小規模企業者は、基本理念にのっとり、地域における自らの社会的責任を認識し、その事業活動を行うに当たっては、地域社会の維持及び発展に寄与するよう努めなければならない。
(中小企業団体等の役割)
第5条 中小企業団体等は、基本理念にのっとり、中小企業者及び小規模企業者の公正な経済活動の機会の充実のため、当該中小企業団体等への加入を積極的に促進し、活動の活性化に努めるものとする。
2 中小企業団体等は、基本理念にのっとり、中小企業者及び小規模企業者が相互にその経営資源(法第2条第4項に規定する経営資源をいう。以下同じ。)を補完することに資するよう、構成員同士の交流又は連携の促進に努めるとともに、自らも他の中小企業団体等との交流又は連携に努めるものとする。
3 第2条第3号イに掲げる団体は、基本理念にのっとり、商店街が有する商品を販売し、又はサービスを提供する機能、コミュニティを形成する機能その他の地域住民の豊かな生活を支える機能を維持し、又は充実させるため、中小企業者及び小規模企業者と地域住民とのつながりを強化する取組の実施に努めるものとする。
(企業支援団体の役割)
第6条 企業支援団体は、基本理念にのっとり、中小企業者及び小規模企業者が行う経営の向上及び改善のための取組を積極的に支援するよう努めるとともに、本市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(大企業者の役割)
第7条 大企業者は、基本理念にのっとり、自らも地域社会の一員であることを認識し、中小企業及び小規模企業の振興の重要性についての理解と関心を深めるよう努めるとともに、本市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(金融機関の役割)
第8条 金融機関は、基本理念にのっとり、中小企業者及び小規模企業者が行う経営の向上及び改善のための取組の支援に努めるものとする。
2 金融機関は、基本理念にのっとり、企業支援団体による中小企業者及び小規模企業者への支援に協力するよう努めるとともに、本市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(高等教育機関の役割)
第9条 高等教育機関は、基本理念にのっとり、その教育活動を通じて、中小企業及び小規模企業の振興の重要性についての学生の理解と関心を深めるよう努めるとともに、中小企業及び小規模企業を担う人材の育成に努めるものとする。
2 高等教育機関は、基本理念にのっとり、中小企業者及び小規模企業者が行う経営の革新のための取組に協力するよう努めるものとする。
3 高等教育機関は、基本理念にのっとり、本市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(市民の役割)
第10条 市民は、基本理念にのっとり、中小企業及び小規模企業の振興の重要性についての理解と関心を深めるよう努めるとともに、本市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(市の責務)
第11条 市は、基本理念にのっとり、中小企業及び小規模企業の振興に関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施しなければならない。
2 市は、基本理念にのっとり、前項の規定により策定する施策に中小企業者及び小規模企業者、中小企業団体等、企業支援団体、大企業者、金融機関、高等教育機関並びに市民の意見を十分に反映させるよう努めるとともに、その施策の実施に当たっては、これらの者の理解と協力を得るよう努めなければならない。
3 市は、基本理念にのっとり、第1項の施策を策定するに当たっては、国、県その他公共団体と密接な連携を図るよう努めなければならない。
4 市は、基本理念にのっとり、中小企業者及び小規模企業者、中小企業団体等、企業支援団体、大企業者、金融機関、高等教育機関、市民等の相互の連携が図られるよう総合的な調整に努めなければならない。
第2章 中小企業及び小規模企業の振興に関する基本的な施策等
(中小企業・小規模企業振興計画の策定)
第12条 市長は、中小企業及び小規模企業の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、中小企業及び小規模企業の振興に関する計画(以下「中小企業・小規模企業振興計画」という。)を定めるものとする。
2 中小企業・小規模企業振興計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 中小企業及び小規模企業の振興に関する目標
(2) 中小企業及び小規模企業の振興のための施策に関する事項
(3) 前2号に掲げるもののほか中小企業及び小規模企業の振興のために必要な事項
3 市長は、中小企業・小規模企業振興計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 前項の規定は、中小企業・小規模企業振興計画の変更について準用する。
(人材の育成及び確保等)
第13条 市は、中小企業者及び小規模企業者の事業活動に必要な人材の育成及び確保のために必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、次代の社会を担う子どもたちをはじめとする市民が中小企業者及び小規模企業者の重要性についての理解と関心を深めることができるよう、その普及啓発に努めるものとする。
(経営の革新等の促進)
第14条 市は、中小企業者及び小規模企業者による経営の革新及び経営資源の確保を促進するために必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、前項の施策を講ずるに当たっては、その内容に応じ、中小企業者及び小規模企業者により地域資源が有効に活用されるよう配慮しなければならない。
(創業の促進)
第15条 市は、中小企業及び小規模企業の創業を促進するために必要な施策を講ずるものとする。
(事業承継の円滑化)
第16条 市は、中小企業者及び小規模企業者の事業の承継が円滑に行われるために必要な施策を講ずるものとする。
(従業員の福祉の向上)
第17条 市は、中小企業者及び小規模企業者による労働環境の改善その他のこれらの従業員の福祉の向上のために必要な施策を講ずるものとする。
(販路の開拓等)
第18条 市は、中小企業者及び小規模企業者の国内外への販路の開拓及び取引の拡大のために必要な施策を講ずるものとする。
(自然災害時における事業継続等)
第19条 市は、自然災害、金融危機等により経営が悪化し、又は事業活動の継続が困難となった中小企業者及び小規模企業者の経営の改善又は事業活動の継続のために必要な施策を講ずるものとする。
(中小企業団体等及び企業支援団体の取組の支援)
第20条 市は、中小企業団体等及び企業支援団体が行う中小企業及び小規模企業の振興に資する取組を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
(小規模企業者への配慮)
第21条 市は、この章に規定する施策等の策定及び実施に当たっては、経営資源の確保が特に困難であることが多い小規模企業者の事情を踏まえ、必要な配慮をするものとする。
(財政上の支援)
第22条 市長は、中小企業及び小規模企業の振興に関する施策を推進するため必要があると認めるときは、予算の範囲内において、財政上の支援をすることができる。
第3章 雑則
(委任)
第23条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。