○金沢市における市民と動物が共生する社会の推進に関する条例
令和3年3月22日
条例第4号
目次
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 動物の適正な飼養(第9条―第12条)
第3章 市民と動物が共生する社会の推進に関する基本的な施策等(第13条―第16条)
第4章 動物の引取り、収容等(第17条―第20条)
第5章 雑則(第21条・第22条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市における市民と動物が共生する社会の推進について、基本理念を定め、並びに市、市民、飼い主になろうとする者、飼い主及び動物取扱業者の責務を明らかにするとともに、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「法」という。)に基づく施策その他の市民と動物が共生する社会の推進に関する施策の基本となる事項等を定めることにより、市民の動物愛護の精神の高揚を図り、もって市民と動物が幸せに暮らす社会の実現に資することを目的とする。
(1) 市民 市内に居住し、通学し、又は通勤する個人及び市内において事業又は活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。
(2) 動物 哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物(畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用に供するものを除く。)のうち、人が飼養し、若しくは保管し、又は給餌するものをいう。
(3) 飼い主 動物の所有者(所有者以外の者が飼養し、又は保管する場合は、その者)をいう。
(4) 動物取扱業者 法第12条第1項第4号に規定する第1種動物取扱業者及び法第24条の3第1項に規定する第2種動物取扱業者をいう。
(5) 終生飼養 動物がその命を終えるまで適切に飼養することをいう。
(6) 飼養施設 動物の飼養又は保管のための施設をいう。
(基本理念)
第3条 市民と動物が共生する社会の推進は、動物は命あるものであり、その命は尊ぶべきものであるとともに、動物が社会において欠かすことのできないもので、飼い主にとって家族の一員であるという認識の下に行われなければならない。
2 市民と動物が共生する社会の推進は、動物に関する考え方、価値観等が多様であることを理解し、それらの違いに十分配慮して行われなければならない。
3 市民と動物が共生する社会の推進は、動物の生態、習性、生理、疾病等についての正しい知識の普及及び公衆衛生の確保のための方策が必要であるとの認識の下に行われなければならない。
4 市民と動物が共生する社会の推進は、子どもの豊かな情操を育てることに資するとの認識の下に行われなければならない。
5 市民と動物が共生する社会の推進は、市、市民、飼い主になろうとする者、飼い主及び動物取扱業者の相互の理解と連携の下、協働して行われなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市民と動物が共生する社会の推進に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施しなければならない。
2 市は、基本理念にのっとり、前項の規定により策定する施策に市民、飼い主になろうとする者、飼い主及び動物取扱業者(以下「市民等」という。)の意見を反映させるよう努めるとともに、当該施策の実施に当たっては、市民等の理解と協力を得るよう努めなければならない。
(市民の責務)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、動物を飼養し、又は保管しているかどうかにかかわらず、動物が命あるものであることを認識してその愛護に努めるとともに、市が実施する市民と動物が共生する社会の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(飼い主になろうとする者の責務)
第6条 飼い主(動物を保管する者を除く。次条第3項において同じ。)になろうとする者は、基本理念にのっとり、動物の飼養に先立ち、飼養しようとする動物の生態、習性、生理、疾病等に関する知識の習得に努めるとともに、将来にわたる飼養の可能性について考慮し、当該動物がその一生を終えるまで飼養する責務を果たす上で支障が生じないよう努めなければならない。
(飼い主の責務)
第7条 飼い主は、基本理念にのっとり、飼い主としての責任を自覚し、飼養し、又は保管する動物の生態、習性、生理、疾病等について理解するとともに、愛情をもって動物を適正に飼養し、又は保管しなければならない。
2 飼い主は、基本理念にのっとり、動物の飼養又は保管に当たっては、近隣住民の理解を得るよう心掛け、周辺の生活環境や自然環境に配慮しなければならない。
3 飼い主は、基本理念にのっとり、動物の終生飼養に努めるとともに、やむを得ずその動物の飼養が困難となった場合は、自らの責任において新たな飼い主を見つけるよう努めなければならない。
(動物取扱業者の責務)
第8条 動物取扱業者は、基本理念にのっとり、飼養し、又は保管する動物の健康及び安全の保持及び向上に努めるとともに、動物を販売し、又は譲り渡そうとする場合には、購入者又は譲受人に適正な飼養保管方法を説明し、理解させるように努めなければならない。
2 動物取扱業者は、基本理念にのっとり、動物を販売し、又は譲り渡そうとする場合には、購入者又は譲受人に対して終生飼養を促すとともに、当該購入者又は譲受人において終生飼養が困難であると認められるときは、動物を販売し、又は譲り渡さないよう努めなければならない。
3 動物取扱業者は、基本理念にのっとり、市が実施する市民と動物が共生する社会の推進に関する施策に協力しなければならない。
第2章 動物の適正な飼養
(飼い主の遵守事項)
第9条 飼い主は、動物を適正に飼養し、又は保管するため、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 動物の種類、数、発育状況及び健康状態に応じて、適正に餌及び水を与えること。
(2) 疾病及びけがの予防等、動物の日常の健康管理に努めるとともに、疾病にかかり、又は負傷した動物については、獣医師による診療を受けさせる等、速やかに適切な措置を講ずること。
(3) 適正な飼養又は保管のために必要があるときは、動物の種類、生態、習性及び生理を考慮した飼養施設を設けるとともに、施設内における適切な温度や湿度の維持等適切な飼養環境の確保を図ること。
(4) 動物の排せつ物等を適正に処理することにより、飼養施設の内外を常に清潔に保ち、悪臭又は昆虫等の発生を防止すること。
(5) 動物が公共の場所又は他人の土地、建物等を不潔にし、又は損傷しないようにすること。
(6) 動物の異常な鳴き声、悪臭、羽毛等により、他人に迷惑をかけることがないようにすること。
(7) 飼養又は保管をする動物の数は、適正な飼養又は保管を行うための環境の確保、終生飼養の確保及び周辺の生活環境の保全に支障を生じさせないよう適切な管理をすることが可能な数とすること。
(8) 飼養又は保管をする動物がみだりに繁殖し、適切な飼育環境及び終生飼養の確保又は新たな飼い主を見つけることが困難となるおそれがあると認めるときは、その生殖を不能にする手術その他の繁殖を防止するために必要な措置を講ずること。
(9) 人と動物の共通感染症について正しい知識を持ち、感染の予防に努めること。
(10) 動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるとともに、逸走した場合は、自らの責任において捜索し、収容すること。
(11) 動物が人の生命、身体又は財産に害を加えないように飼養又は保管をすること。
(12) 災害時における動物の適正な飼養又は保管のための準備を行うよう努めるとともに、災害が発生した場合には、自らの安全を確保した上で、当該動物の健康及び安全の保持並びに当該動物による事故の防止に努めること。
(1) 犬を係留しておくこと。ただし、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがないものとして規則で定める場合は、この限りでない。
(2) 犬の種類、健康状態等に応じて、適正に運動させること。
(3) 犬の行動を管理できるよう適切なしつけを行うこと。
(4) 犬を飼養施設の敷地外に連れ出すときは、ふんを回収するための容器等を携行するとともに、犬がふんをしたときは、直ちにこれを回収して持ち帰り、適切に処理すること。
(5) マイクロチップ、首輪、名札等の装着により、犬が自己の所有に係るものであることを明らかにすること。
(1) 猫の健康と安全を保持し、及び周辺の生活環境を保全するため、猫を常時屋内で飼養し、又は保管するよう努めること。
(2) 猫に排便等の適切なしつけを行うこと。
(3) マイクロチップ、首輪、名札等の装着により、猫が自己の所有に係るものであることを明らかにすること。
(飼い主のいない猫に給餌を行う者の遵守事項)
第12条 飼い主のいない猫に給餌を行う者は、次に掲げるところにより当該猫を適正に管理することとし、周辺の生活環境の保全に支障が生じるような給餌を行ってはならない。
(1) 給餌及び給水の管理を行うとともに、猫のふん等を処理するよう努めること。
(2) 生殖を不能にする手術等により、繁殖を防止するよう努めること。
(3) 周辺地域の住民等の理解を得るよう努めること。
第3章 市民と動物が共生する社会の推進に関する基本的な施策等
(基本施策)
第13条 市は、次に掲げる施策を実施するものとする。
(1) 市民等と協働して行う動物の愛護及び管理に係る取組に関すること。
(2) 市民に対する動物の愛護並びに適正な飼養及び保管についての教育並びに意識の啓発に関すること。
(3) 市民と動物が共生する社会の推進に関する環境の整備に関すること。
(4) 市が収容した犬及び猫の譲渡の推進に関すること。
(5) 前各号に掲げるもののほか、市民と動物が共生する社会の推進に必要と認められる施策
(国等との連携)
第14条 市は、前条各号に掲げる施策その他の市民と動物が共生する社会の推進に関する施策を効果的に実施するため、国、石川県、他の地方公共団体、関係団体等との連携を図るよう努めるものとする。
(指導及び助言)
第15条 市長は、動物の健康若しくは安全を保持し、又は動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止するため必要があると認めるときは、飼い主等に対して必要な指導及び助言を行うことができる。
2 前項に定めるもののほか、市長は、多数の犬又は猫を飼養し、又は保管する者として規則で定める者に対し、当該犬又は猫の飼養施設の構造及び飼養の方法について必要な指導及び助言を行うことができる。
3 第1項に定めるもののほか、市長は、飼い主のいない猫に給餌を行う者その他の者に対し、飼い主のいない猫の生殖を不能にする手術、適切な給餌等に関する必要な指導及び助言を行うことができる。
(支援)
第16条 市長は、飼い主のいない猫の繁殖の制限その他市民と動物が共生する社会の推進に関し必要があると認めるときは、市民に対し、技術的な支援をし、又は予算の範囲内において、財政上の支援をすることができる。
第4章 動物の引取り、収容等
(犬及び猫の引取り)
第17条 市長は、法第35条第1項本文の規定により犬又は猫の引取りをその所有者から求められた場合には、当該所有者に対し、継続して飼養することができない理由について確認するものとする。この場合において、必要があると認めるときは、市長は、当該所有者に対し、飼養を放棄せず、終生飼養をすることを求めるものとする。
2 市長は、法第35条第1項本文の規定による犬又は猫の引取り等に際して、法第37条第1項に規定する生殖を不能にする手術その他の措置が適切になされるよう、必要な指導及び助言を行うものとする。
3 市長は、法第35条第1項本文又は第3項の規定により犬又は猫を引き取る場合には、日時及び場所の指定その他これらを引き取るために必要な指示をすることができる。
4 市長は、犬若しくは猫の引取りをその所有者から求められた場合又は所有者の判明しない犬若しくは猫の引取りをその拾得者その他の者から求められた場合であって、動物取扱業者から引取りを求められた場合その他の引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として規則で定める場合には、法第35条第1項ただし書(同条第3項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定により、その引取りを拒否することができる。
(疾病にかかり、又は負傷した犬又は猫に対する措置)
第18条 市長は、道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、又は負傷した犬又は猫を発見した者から通報があった場合であって、その所有者が判明しないときは、法第36条第2項の規定によりこれを収容するものとする。
2 市長は、前項の規定により犬又は猫を収容したときは、治療その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
3 前項の規定は、法第35条第1項本文又は第3項の規定により犬又は猫を引き取った場合に準用する。
(公示等)
第19条 市長は、法第35条第3項の規定により犬若しくは猫を引き取り、又は法第36条第2項の規定により犬若しくは猫を収容したときは、その所有者が判明しているものにあっては当該所有者に引き取るべき旨を通知し、所有者が判明していないものにあってはその種類、収容の日時及び場所その他必要な事項を規則で定めるところにより2日間公示するものとする。
(犬及び猫の譲渡)
第20条 市長は、法第35条第1項本文の規定によりその所有者から引き取った犬若しくは猫又は前条第3項の規定による所有者の引取りがない犬若しくは猫を、その飼養を希望する者で適正に飼養できるものに譲渡することができる。
2 前項の規定による譲渡を求める者は、あらかじめ、その旨を市長に申し出なければならない。
第5章 雑則
(動物愛護管理員)
第21条 法第37条の3第1項の規定に基づき、動物愛護管理員を置く。
(委任)
第22条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
1 この条例は、令和3年4月1日から施行する。
2 金沢市動物愛護管理員の設置に関する条例(令和2年条例第2号)は、廃止する。